|
ぬくもりの肖像 ●#2 インターネット
〜絆をみつめて(2) 富山市のマッサージ師、九曜弘次郎さん(2?)は、パソコンなしの生活が考えられない。インターネットで手に入る情報は「自立」を支えてくれ、Eメールで知った友人はかけがえのない存在だ。毎日四時間は、画面に向かう。 生まれつき両目が見えない。社会人になって、視覚障害者が暮らしていくことの難しさを、ひときわ実感した。電車に乗りたいと思った。だが、時刻表が読めない。銀行口座からの振り込みは、現金自動預入払出機(ATM)がタッチパネル方式の場合、まったくお手上げだ。 こうした不便を一気に解消してくれたのが、インターネット上の様々なホームページ(HP)だった。 「エイチ、ティー、ティー、ピー、コロン、スラッシュ、スラッシュ……」「イラッシャイマセ、コノページハ……」。九曜さんのパソコンからは、人工音声が絶え間なく流れる。必要な声を聞き分け、キーボードをたたく。引き出した情報は、再びパソコンが読み上げてくれる。 九曜さんが、こうした音声化ソフトを手にしたのは、五年ほど前だ。今や本や新聞の活字を点訳するソフトもある。技術の進歩は、行動範囲を格段に広げてくれた。 「どうしたら音声化しやすいHPが作れますか」 一昨年九月、埼玉県所沢市のプログラマー赤間弘靖さん(39)からEメールが届いた。 その四カ月前、九曜さんは自分のHP(http://www.sf-dream.com/)を開設していた。点字メニューがある飲食店紹介などのほか、ラジオの点字番組表をダウンロードできるようにもした。そして視覚障害者の悩みを率直に語った。 障害者のためのボランティア活動をしていた赤間さんが、このページに目をとめた。 音声化ソフトも、実は万能ではない。ページ上の写真やイラストは音声にできない。文字間のスペースも問題だ。例えば「旅行」も「旅 行」とすると「たび ゆき」と読んでしまう。 「改行の位置が悪い」。そんなメールを何度も交わしながら、二人 は試行錯誤を続けた。三カ月が過ぎた。赤間さんは「バリアフリーウェブガイド」(http://bfree.purewell.net/)というHPを立ち上げ、音声化しやすいHPづくりのこつを披露した。パソコン雑誌でも紹介され、約二万人がアクセスしている。 九曜さんは今、「視覚障害者のために、音声化ソフトに配慮したHPにしてほしい」と、企業などにメールで要望を伝えている。以前なら「自分一人で言っても仕方がない」とあきらめていた。それが、赤間さんと出会って、驚くほど積極的になれた。 地元ラジオ局のHPには、音声化ソフトに対応する内容が追加された。願いは、少しずつ形になってきた。 九曜さんにとって、パソコンは「夢をかなえてくれた魔法の機械」だった。だが、まだ一つかなえられていないことがある。今でもメールを交わしている赤間さんとの対面だ。「同じ価値観を持った人に出会えて、本当にうれしかった。忙しい方ですが、機会があれば、直接会って福祉の話をしてみたい」
(1/3) |