始めようDTM 第18回 ピッチベンドとは?                           九曜 弘次郎  今回はピッチベンドについて基本的なことをお話しします。  ピッチベンドというのは、 音程を連続的に滑らかに変化させるためのものです。  西洋音楽では通常「ど」から「し」までシャープを含めて12段階の音程に分けられています。しかしこれは人間がこのように分けたもので、「ど」と「どのシャープ」の中間の音はピアノなどの鍵盤楽器では出すことはできませんが、実際にはこのような音程は存在しています。  しかしシンセサイザーを初めとするMIDIキーボードは、ピアノと同じ鍵盤楽器ですので、鍵盤だけではこのような音程を出すことはできません。  そこで「ピッチベンド」と呼ばれるものを利用することで、鍵盤だけでは表現することが不可能な音程の変かを表現できるように工夫されているのです。  シンセサイザーには、鍵盤の左側に 「ピッチベンドホイール」 が付いています。ピッチベンドホイールの形状はメーカーや機種により異なるのですが、主に以下のようなものがあります。  1. ホイール形  2. レバー形  3. ジョイスティック形  ホイール形は、ヤマハやカワイといったメーカーの機種ででよく使用されています。半円のような形をしており、手を離した状態では中央が上を向いています。中央を前へ倒すと音程が高い方に移動し、後側に倒すと音程が低い方に移動します。ピッチベンドホイールにはバネが付いていますので、手を離すと中央が上に戻る仕組みになっています。  レバー形はローランドのシンセによく使用されています。手を離した状態では、レバーの先端が上を向いており、右に倒すと音程が高い方に、左に倒すと低い方に移動します。 ジョイスティック形は、ゲーム機に付いているジョイスティックのような形をしたもので、コルグのシンセで使用されています。これも手を離した状態では先端が上を向いており、右に倒すと音程が高い方に、左に倒すと低い方に移動します。なお前後に動かすとビブラートがかかるようです。  さて、つぎにこのピッチベンドをMIDIレベルから見てみることにしましょう。  鍵盤などからの演奏情報と同様、MIDIキーボードのピッチベンドホイールを動かすと、MIDI OUT端子からはピッチベンドの情報が素早く出力されます。ということは、このようなピッチベンドホイールのついたMIDIキーボードを利用すれば、リアルタイムレコーディングでピッチベンドの情報も録音することができます。  しかし、このようなキーボードをお持ちでない方は、この情報を例のステップ入力で数値として入力することになります。  ではピッチベンドの情報はどのように数値化するのでしょうか。  以前に、コントロールチェンジを利用することで、ピアノに付いているペダルの情報、またプログラムチェンジを利用することで音色が切り換えられることをお話ししました。 ピッチベンドも同様に「ピッチベンド」というMIDIメッセージが用意されているのです。  しかしコントロールチェンジやプログラムチェンジは、設定の値が0〜127の128段階でしたが、 ピッチベンドはそれとは異なり16384段階になっています。 なぜ16184段階なのかという話しをしますと少々難しくなりますので省略しますが、 127段階では変かのきめ細かさを表現するうえで足りないため、このような数字になっているということです。  さて、この16384をどのように使用するのかはシーケンスソフトにより多少異なるようですが、レコンポーザの場合は、中間地点である、いわゆるピッチベンドホイールから手を離した状態を0とし、 それより音程を高い方に動かした場合は正(プラス)の数、低い方に動かした場合は負(マイナス)の数として表します。ちなみにピッチベンドホイールを音程の高い方に最大限に上げきった状態の値は8191、 逆に1番低い方に動かした状態の値は-8192として表すことができます。  さて、つぎにベンドレンジについてのお話しをします。ベンドレンジとは、ピッチベンドホイールを使用して変化することのできる音程の幅を設定するものです。  例えばベンドレンジを2にして、ピッチベンドホイールを最大にすると、もとの音よりも1音高くなります。「ど」の鍵盤を押しているのであれば「れ」の音に、「そ」の場合は「ら」にといった感じです。逆に最小にした場合は、もとの音より1音低くなります。  ベンドレンジは1〜24まで設定することができ、 1で半音2で全音…12で1オクターブ、24で2オクターブです。言い換えれば、半音単位で2オクターブまで設定できることになります。  ちなみにたいていの音源での初期状態のベンドレンジは2、つまり1音に設定されているようです。  さて、このベンドレンジの設定もMIDIを介して行うことができます。具体的にはコントロールチェンジを使用します。ただし三つのコントロールチェンジを組み合わせて使用しなければなりませんので、やや難しくなります。ですからここでは簡単にだけ触れたいと思います。  設定はRPN(「レジスタード・パラメーター・ナンバー」の略) と呼ばれるコントロールチェンジを使用します。  まずRPN MSB(コントロールチェンジ101番)を送信し、 音源にRPNであることを知らせます。  つぎにRPN LSB(コントロールチェンジ100番)で、どのパラメータを変更するのかを知らせます。ちなみにベンドレンジの場合は0番です。  そしてDATA ENTORY MSB(コントロールチェンジ6番)で、 ベンドレンジの値を設定します。  レコンポーザで入力する場合は以下のように操作します。  まずエディット画面で[/]キーを押し、 スペシャルコントローラを呼び出します。  [上下矢印]キーで「RPN (M) : RPN MSB (101)[ ]」 を選択して[リターン]キーを押します。 RPN MSBが入力されます。この行のVELのところに0が入力されていることを確認し、もし違う値になっていましたら0に書き替えます。  つぎの行に進みます。[リターン]キーでも押してください。  つぎの行に進みましたら、同じく[/]キーを押して、 スペシャルコントローラを呼び出します。  [上下矢印]キーで「RPN (L) : RPN LSB (100)[ ]」を選択し、 [リターン]キーを押します。 RPN LSBが入力されます。また同じくVELの値が0になっているか確認し、なっていなければ0にします。  同じくつぎの行に進みます。スペシャルコントローラを呼び出し「DATA(M) :DATA ENTRY MSB ( 6)[ ]」を選択して[リターン]キーを押します。DATA ENTORYMSB」が入力されます。ここでVELには、ベンドレンジの値を入力します。 0〜24の範囲で設定します。  なおできれば、安全のため各パラメータ(行) のステップタイムを1以上にしておくことをお勧めします。 0でもかまいませんが、これですと場合によってはデータがひっくり返って音源に送信されることがあり、うまく動作しないことがあります。  以上で準備完了です。  さてピッチベンドの入力ですが、これも連続してたくさんのパラメータを入力しますので、VALUE SETを使うのが楽です。  例えば全音符の「ど」を入力します。  上記の音符の頭にカーソルを移動し[Z]キーを押します。VALUE SETになりますので続けて[P]キーを押します。ピッチベンドセットになります。  つぎにピッチベンドをかける音符の最後の行に移動し[リターン]キーを押します。  例の「TOP END WIDTH…」というのが表示されます。  各パラメータの説明や値の設定方法は先月号でしたとおりです。ただピッチベンド値は、前述のピッチベンドの説明のとおりです。つまり「ど」の音で、ピッチベンドを利用して「れ」に移動したい場合、 ベンドレンジが2だとしますと、TOPは0に、ENDは8191にします。  なおピッチベンドを使用したあとには、 必ずピッチベンド値0を入力するようにしてください。こうしないとピッチベンドがかかったままになりますので、以降の演奏の音程が狂ってしまいます。  実際の使用例としては、ギターのチョーキングやスライド、あとボーカルにこぶしをかけるなど、工夫次第でいろいろ考えられます。どのようにピッチベンドを利用するのかについては、なかなか難しいところがあります。  いろいろと試してみてください。 ======================================================================== E-MAIL:kojiro.kuyo@nifty.com http://member.nifty.ne.jp/KUYO/ ========================================================================