始めようDTM 第17回 VALUE SET 九曜 弘次郎  前回は、各スペシャルコントローラの機能や役割、入力法について解説しまし た。  今回はこれらのメッセージを連続的に入力することができる「VALUE SET」 に ついて説明します。  曲の最初に音量を決めたり、音のバランスをとったりするときには、スペシャ ルコントローラ機能を利用して、曲の一番最初にそれらのMIDIメッセージを入力 すればすみます。  しかし、曲の途中で音量を徐々に大きくしたり小さくしたりすることにより、 生の演奏のように強弱を付けたり、音の定位を左から右にだんだんと持っていく ことで、車が目の前を通り過ぎるような効果を出したい場合があります。  もちろんスペシャルコントローラで該当するコマンドをいくつも入力しても良 いのですが、割とめんどうなものです。  こんなときに便利なのが、レコンポーザに備わっている「VALUE SET」 という 機能です。  言葉で説明しても分かりにくいので、まずは例を挙げて解説します。  まずはレコンポーザを起動してエディット画面に入ってください。入り方は分 かりますね。「MAIN COMMAND」から[F3]キーを押して[上下矢印]キーでエディッ トを行うトラックを選択して[リターン]キーです。  エディット画面に入りましたら、まず以下のデータを入力してみましょう。 ------------------------------------------------------------------------ MEAS STEP:NOTE K# ST GT VEL 1 1:C4 60 1920 1921*100 1 2:------ 1920 -------- 2 1:C4 60 1920 1900 100 2 2:------ 1920 -------- ------------------------------------------------------------------------  これは単に2小節間「ど」の音を延ばすだけの例です。これからの実験のため 便宜上入力したもので、特に意味はありません。  さて上記データを再生すると 「どーーーー」 と2小節間音がなって止まりま す。あたりまえですね!!  では、このデータにエクスプレッションのデータを入力して、最初は大きな音 で音が鳴り始め、だんだんと音が小さくなるようにしてみましょう。  まずは1小節目1ステップ目にカーソルを合わせます。これは「VALUE SET」 でデータを入力する際の、先頭位置を指定します。つまり「どこから」を指定す るわけです。  ここで「VALUE SET」を呼び出すために[Z]のキーを押します。  つぎに「VALUE SET」でなにを入力するのかを決めます。 ここではエクスプレ ッションを入力しますので[E]のキーを押します。  つぎに「VALUE SET」 でデータを入力する際の終点を指定します。 つまり「ど こまで」を指定するわけです。  ここでは2小節間の「ど」を範囲選択しますので、2小節目の2ステップ目、 つまり最後の小節線のところにカーソルを合わせて[リターン]キーを押します。  すると以下のような画面が表示されます。 ------------------------------------------------------------------------ EXPRESSION SET top 127end 127delay 0width 3840step 10 ------------------------------------------------------------------------  まずは最初の「EXPRESSION SET」は、VALUE SETで今エクスプレッションを設 定しようとしていることを表しています。  つぎからがポイントです。 top 127end 127delay 0width 3840step 10  これは項目と、それら項目に対する値が書かれているわけです。どんな項目が あるのかだけ見てみましょう。 top end delay width step の5項目です。  さてこれはなにを意味しているのか?  まず「VALUE SET」を選択しリターンを押した状態では「top」のところにカー ソルがあるはずです。ちなみに項目間の移動は[左右矢印]キーで行います。  なおレコンポーザのバージョン3.0をお使いの方は「delay」「with」にカーソ ルが移動したとき、最初の1文字を読み上げません。つまり「elay」「Idth」と 音声出力されます。これはVDM100がレコンポーザの2.5Gまでを想定して作られて いるためです。ご注意ください。  まず「top」というのは、変化を開始する最初の値です。この 「VALUE SET」は、ちょうど坂道に似ています。今はエクスプレッションで、音が大きなところから だんだんと小さくなるように設定しようとしていますが、これは坂道のてっぺん から下にだんだんと降りていくのに似ています。  変化を開始する最初のところというのは、つまり坂道を歩くときに、最初にい る場所を示しています。坂道の頂上から降りようとしているのか、それとも半分 ぐらい降りたところからさらに降りようとしているのか、または一番下から上ろ うとしているのか…といったときの「最初にいる位置」です。  ここではエクスプレッションの値が大きなところから、徐々に値を小さくして 音量を下げていきますので、最大値の「127」にしておきます。  つぎに[右矢印]キーを押してみてください。「end」の位置にきます。 カーブ 1〜3のとき、これは坂道で言えばいわゆるゴール地点ですね。つまり終点を表 します。カーブ4のときは、この値が最大振幅数となります。カーブの設定は後 述します。  ここでは最後には音量を小さくしたいので、できるだけ小さな値を設定します。 ちなみに値を変更は[Rollup]キーで値が大きくなり[Rolldown]キーで値が小さく なります。  さて、また[右矢印]キーを押してみてください。「delay」に移動します。 こ れは変化を開始するまでの時間を指定します。つまり音が鳴り始めてからすぐに 変化を開始するのか、それとも1拍たったところぐらいから変化を始めるのかと いったことです。  最初は値が0になっていますので、 音が鳴り始めてからすぐに変化が始まるよ うになっています。これを例えば1拍たったところから変化を始まるようにする には、 ここの値を480にします。これはレコンポーザで音符を入力するときの値 と同じです。  値の変更は[Rollup]キーで大きく、[Rolldown]キーで小さくなります。変更で きる範囲は、0から範囲選択したデータのゲートタイム分です。  つぎに[右矢印]キーを押すと、「width」に移動します。 これは変化を急激に 行うか、緩やかに行うかを設定します。坂道にたとえるなら、緩やかな斜面か急 斜面かということですね。  ここの値は大きくするほど滑らかに変化し、小さくすると急激に変化します。 設定範囲は0から、最大値は範囲選択されたデータのST値-1となります。  つぎにまた[右矢印]キーを押してみてください。「step」に移動します。ここ の値を大きくすると、変化量を減らすことができます。  以上で各項目の説明は終わりですが、この状態で使えるキー操作を記述します。  数字の1〜5のキー。カーブの種類を選択します。  [1]:「top」から「end」まで直線で変化します。  [2]:「top」から「end」まで、カーブ1で変化します。  [3]:「top」から「end」まで、カーブ2で変化します。  [4]:「top」から「end」を最大振幅としてサインカーブで変化します。  [5]:ランダムに変化します。  F1〜F10:上記ランダムカーブ以外のとき、カーブの波の数を設定します。 [F1]:1個、[F2]:2個…、[F10]:10個となります。  [M]:現在の設定状態を実際にMIDI音源から出力し、音で確かめることができま す。 ですから今まで説明してきた項目をいろいろ変えながら[M]キーを押して音 で確認し、お好みの設定値を見つけてください。  [リターン]キー:上記の設定で確定し、データに入力されます。  [ESC]:設定をキャンセルし、エディット画面に戻ります。  少し分かりにくい説明でしたが、いろいろと設定を変えながら音を出してみた りして、変化の仕方を確認してみてください。  それでは、今はエクスプレッションを例に説明しましたが、他になにが設定で きるのか一覧にしてみました。 ------------------------------------------------------------------------  ZD:DATA ENTORY SET  ZE:EXPRESSION SET  ZG:GT SET  ZM:MODULATION SET  ZN:PANPOT SET  ZO:VOLUME SET  ZP:PITCH BEND SET  ZT:TEMPO SET  ZX:NOTE TO PITCH(Ver3.0のみ使用可) ------------------------------------------------------------------------  となっています。  GT SET、及び「NOTE TO PITCH」以外の使い方は、 基本的にさきほどのエクス プレッションと同じです。  「GT SET」の使い方を説明します。これはゲートタイムを設定するものです。  (1)まず、GT SETを行う最初の小節/ステップにカーソルを合わせ[ZG]を入力 します。  (2)GT SETを行う最後の小節に/ステップにカーソルを合わせて[リターン] キーを押します。  (3)「TOP」と聞いてきます。1〜9999の範囲で値を入力し[リターン]キーを 押します。  (4)「END」と聞いてきます。1〜9999の範囲で値を入力して[リターン]キー を押します。  これで設定は終わりです。  ところで「VALUE SET」で一番よく利用されると思われるのが、ピッチベンド の入力ではないかと思います。  ピッチベンドは、ギターのチョーキング、スライドといった奏法を表現したり、 こぶしを効かせたりするのに使用されます。  ピッチベンドの説明をするには、多少ピッチベンドの仕組みを説明する必要が あるかと思いますので、これにつきましては次回にまわしたいと思います。 ======================================================================== E-MAIL:kojiro.kuyo@nifty.com http://member.nifty.ne.jp/KUYO/ ========================================================================